天狗石(天狗岩・六角石)
上田地域一帯で天狗石と通称で呼ばれている六角柱状の石があります。
石碑(月待塔)に天狗石が使われている例です。
石灯籠の台として使われている例です。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、神社の本殿敷地内に石柱として祀られているのが柵越しに見えます。
何に使用されていたかは不明ですが、神社の境内に置いてあった天狗石です。
きれいな六角形をしている石柱ですので石工さんが彫った細工のように見えますが、実はこの天狗石は特に人為的な手を加えたものではなく全くの天然石なのです。そのあまりに見事な自然の造形ゆえでしょうか、天狗石は古来より大変に貴重なものとされ、上で挙げたように神社仏閣や道祖神などで神聖なものとして祀られてきました。
さて、天狗石の産する場所ですが、これは緑色凝灰岩の真田石と同じく太郎山なのです。太郎山に「指差しゴーロ」と呼ばれるガレ場があります。
上の写真で、正面の山肌に木が生えていない大きな一帯(ガレ場)があるのが分かると思います。これが指差しゴーロでして、そのガレ場の形が人が天に向かって指をさしているように見えるので、そう呼ばれています。
この指差しゴーロのちょうど指先付近に、地質学的には柱状節理という流紋岩の岩肌があります。柱状節理は、北海道の層雲峡や福井県の東尋坊が有名ですが、以前に紹介しました米子大瀑布の崖も柱状節理です。
柱状節理は文字通り石の柱が何本も束になってそそり立っているような構造なのですが、この石の柱が折れて、指差しゴーロの急勾配の斜面を転がり落ちてきたものが天狗石です。ですので、指差しゴーロの下あたりでは相当数の天狗石の柱や欠片を見ることが出来ます。
割ときれいな石柱状で、木の根元に転がっていた天狗石です。
太郎山には数多の天狗伝説が存在し、太郎山は上田の人々から親しまれ続けたと同時に昔から神聖な山として信仰の対象でもあったようです。天狗石という名前からも、このようなきれいな六角柱をした石は、天狗の恵みであると崇められていたと思われます。
一方、天狗石にはもう一つの伝説もあります。
忠臣蔵と肩を並べる仇討ち物語として有名な曾我物語の悲劇のヒロインである虎御前の庵がこの近くにあり、その庵の柱が石化して六角石(天狗石)になった、という伝説です。
実際、指差しゴーロの麓一帯には虎御前にまつわるお堂やお寺、果ては虎御前がお化粧に使った湧き水、など様々なものがあります。虎御前は夫である曾我十郎の亡き後、供養のために善光寺参りをしていますので、上田付近に来た可能性はあると思います。
虎御前はもちろん実在の人物なのですが、曾我物語自体が後世の創作が多分に入っている可能性が大きく、また虎御前が居を構えた場所も全国各地に様々な伝承があり、実際に指差しゴーロの下に居を構えたかどうかは疑問です。伝説上の存在、という意味では上田の人々にとって、虎御前も天狗も同じような存在だったのかも知れません。
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